沖縄市地域づくり協議会(沖縄市コザ地区)の森氏は、常日頃から地域の様々な人達が集まる話し合いの場をより良いものにしたいと考えていました。そんな時、対話を通じて様々なイノベーションに取り組んでいる「株式会社フューチャーセッションズ」の存在を知ります。
「株式会社フューチャーセッションズ」では、多様な立場の人が一堂に会した創造的な対話の場を構築し、多くの気づきやアイデアを生み出したり、参加者同士の新たな関係性が築かれたり、新しいアクションにつながったりする「フューチャーセッション」に取り組んでいました。
「フューチャーセッション」についてぜひ話を聞いてみたい!と考えた森氏。
そこで、地域づくり支援ネット事務局では、2月24日(火)に「株式会社フューチャーセッションズ」を訪問し、森氏がお話をお聞きする機会づくりをお手伝いしました。

■フューチャーセッションとは?
フューチャーセッションの概要について、株式会社フューチャーセッションズの有福氏と上井氏にお話をうかがいました。

株式会社フューチャーセッションズ 株式会社フューチャーセッションズ シニアマネージャー 有福 英幸氏 上井 雄太氏(出典:株式会社フューチャーセッションズHP)

◎フューチャーセッションとは?
フューチャーセッションとは、多種多様な立場から未来のステークホルダー(将来を考える上で必要となる関係者)を招き入れ、創造的な対話を通して、未来に向けての「新たな関係性」と「新たなアイデア」を生み出し、参加しているステークホルダー同士が「協力して行動できる」状況を生み出すための場のことです。

◎バックキャストという考え方を大切にする
今起こっている問題や課題に目を向けるのではなく、将来、例えば10年先、20年先の未来を想像した時に、どのような社会になっていれば人は幸せだろうか、またその社会が実現していると仮定した時に、どのような問題や課題が新たに起こるだろうか、といったことについていろいろな手法を用いてセッションを重ねていきます。

◎フューチャーセッションの流れ(一例)
フューチャーセッションの流れについて、一例を示します。
ステップが進むごとに、参加者の主体性が引き出されていくとともに、参加者同士の関係性もつくられていきます。

ステップ プロセス
ステップ① お互いの考えに傾聴し、共有する
ステップ② ゲストスピーチをもとに視野を広げる
ステップ③ テーマについてさらに掘り下げて話し合う
ステップ④ 取り組みたいテーマを決めて、仲間づくりをする
ステップ⑤ 具体的な課題解決の方法を考え(クイックプロトタイピング)、全体共有する

フューチャーセッションの様子(屋内)

フューチャーセッションの様子(屋外)
フューチャーセッションの様子(出典:株式会社フューチャーセッションズ)

◎フューチャーセッションの取組事例
臨海副都心(お台場島)のまちづくり
多くの企業や大学が立地している地域で、50社ほどの企業によってまちづくり協議会が設置されています。そのまちづくり協議会のメンバーを中心に、働く人や住む人が集まり、13グループに分かれて、臨海副都心のまちづくりの未来について話し合い、2020年のまちのビジョンを創造しました。

大学を核としたまちづくり(熊本県立大学)
大学のキャンパス(野外)を会場にして、大学生、自治体、企業、地元住民等が集まり、大学を核として地域の課題を解決していくまちづくりのあり方について、話し合いを行った事例です。

札幌商店街の活性化
札幌市内の商店街やその周辺に住む住民、在勤者、大学生等が集まり、商店街の活性化に向けて、地域に必要な商店街とは何か?をテーマに行ったフューチャーセッションです。最初は参加者全体で話し合い、その後、商店街ごとに分かれてグループセッションを行い、自分たちの商店街に必要なものをプロトタイプしました。

釜石・大槌ものづくりフューチャーセッション
鉄工業などが盛んで、ものづくりの技術力は高いまちである一方、自分たち独自の商品や産業を生み出すことが大きな課題となっていました。そこで、地元企業、NPO、地域住民、第三セクター等が集まり話し合いを行い、地元の新産業のコンセプトを生み出しました。

■フューチャーセッションの本質、沖縄市地域づくりの未来(意見交換)
お話をうかがった後に、いろいろと意見交換をさせていただきました。意見交換はフューチャーセッションの話から次第に沖縄の地域づくりにまで発展していき、多くの気づきやアイデアが得られる有益な時間となりました。
意見交換の一部をご紹介します。

森 氏:セッションを重ねるごとに多様な意見が出てくると思いますが、例えばものづくりを考えるような場で、そこで出てきた意見をもとに必要となる新たな関係者を呼んだりして、関係性を広げていくのですか(例えば、エンジニアが必要となればエンジニアを呼んでくる等)。

有福氏:そうですね。時と場合によりますが、話し合いに新たな視点やアイデアを吹き込んでくれそうな人材は事前にお声掛けしてセッションに参加してもらうことがあります。また、おしゃっるように、例えばものづくりについて話し合う時に、エンジニアやデザイナーが必要という話になれば、次回のセッションではそのような人材を呼んできて話し合う場合もあります。

森 氏:話し合いの場でよくあるのが、アイデア出しはやったけれどなかなか具体的な形にならない、次につながる話し合いができないというケースです。やりたいと思っている人が自発的に自分たちでできるようにする、行動に移していけるようにすることが重要だと思っています。

有福氏:アイデア出ししたけれど形にならないというケースは確かに多く見られます。
そもそも何が地域の問題なのかについて、自分たちで課題を設定してもらうことから始めることも重要だと思います。こちらは「問い」だけを用意して、自分たちで課題を明確にしてもらうことが、地域の自発性にもつながると思います。また、参加者には、「やりたいと思った人たちが自分たちで行動に移していくこと」が重要であることを丁寧に説明しています。

森 氏:沖縄は離島ということもあって、なかなか外部から人材を連れて来たりできない状況です。そのため、地域の住民だけで話し合って課題解決に取り組まなければいけないことも多くあり、いつももどかしさを感じています。
新たな地域のキーパーソンとして大学生に非常に期待しているところがあるのですが、いかがでしょうか。大学生が入ることで、いろんな視点が加わり、地域の活性化も期待できると思っています。

有福氏:ある大学では、学生が地元で就職できないため東京に出て行ってしまうという危機意識がありました。そこで、地元企業と一緒に課題解決に取り組むような授業を組み込むことで、学生と地域とのつながりづくりや地元への定着率向上に取り組んでいます。大学生だけに着目するのではなく、大学生を地域でずっと育てられる仕組みづくりに目を向けることも大切だと思います。

上井氏:琉球大学では、学生が中心になってファシリテーションや対話に熱心に取り組んでいるグループがあります。また、文科省の事業を活用して、大学が地域の課題解決の拠点となることを目標に、様々な取組を始めている大学でもあります。我々はこのような取組の支援に入っていくことができればと考えています。

有福氏:大学だけの場合だと、生まれたアイデアをどのように具体化していくか、いかに事業化して継続できるモデルにしていくかといった部分が弱いと思います。そこに地元の企業等が加わることで、より持続的で実現性の高いものにできると思います。

森 氏:沖縄では商店街の空き店舗の活用として、様々なNPO法人等に貸したりしていますが、店舗機能が無くなるため、商店街本来の機能が失われていってしまうという危機感があります。そのような商店街の再生に向けて、琉球大学の学生に参画してもらいながら進められたらと思っています。

上井氏:そのような事例もすでにありそうですね。

森 氏:実際に琉球大学の学生がよく当事務所を訪ねてきて、いろいろと話をさせていただくことがあります。ただ先ほどおっしゃられたように、学生だけでは何をどのように進めればよいのかよく分かっていません。そこに「フューチャーセッション」の機能を持ち込んで、地域の企業やNPO等も交えながら具体的な形にしていけたらと思います。

森 氏:今回の国交省の事業では、沖縄市、地域の金融機関とともに協議会を設置して取り組んでいます。地元企業の参画も考えましたが、呼びかけても集まってくれないのではないかという思いがありました。参加してほしい団体に参加してもらうために、何か工夫されていることはありますか。

有福氏:例えば、「釜石・大槌ものづくりフューチャーセッション」では、いきなりフューチャーセッションを開催しても人は集まらないだろうということが懸念されたので、まずは地域のキーマンとなりそうなNPO等に集まってもらって、勉強会の様な形でプレセッションを行いました。そこで目的等を理解してもらい、参加してもらった団体のネットワークから新たに参加を呼びかけてもらうという流れで参加者を集めたことはありますね。

森 氏:沖縄は観光で経済が成り立っていますが、沖縄市は特に目玉となる観光資源も少なく、素通りの街と言われています。そこで人を呼び込む仕掛けとして、子どもを核とした地域ビジネスづくりをテーマとして今回取り組んでいるところですが、今後はものづくりに関連する企業にも参画してもらうことで、より事業の精度を高めていくことができると感じました。
有福氏:セッションの中で質の高い「問い」を設定できれば、共感してくれる人は多く集まってくれそうな企画だと思います。また、クラウドファンディングの手法も用いて、出来上がったものを沖縄だけに限定せずにいろんな人に見てもらい共感して応援してもらうことも大切だと思います。

森 氏:セッションの中で、意見が対立したり、批判が出たり、参加者同士の関係性が壊れるといったことはないですか。

有福氏:特にそのようなことはこれまでないですね。基本的に設定した「問い」に対する話し合いであり、対立を超えていく「問い」の設定に配慮しています。また、設定したテーマに関心がある人に自発的に参加してもらえるようなプログラムデザインを行っています。

森 氏:例えば、沖縄では以前、自衛隊を呼ぶか呼ばないかという議論があって、どちらも地域の活性化を望んでのことなのですが、結果として対立してしまったことがあります。そのような場合は双方の意見をまず聞くしかないのでしょうか。

有福氏:お互いの話を聞くということももちろんありますが、まずは対立を超えていく「問い」の設定が重要だと思います。

上井氏:例えば将来的に目標としたいゴールを共有できるような「問い」の設定であったり、利害関係にとらわれない視野を広げる「問い」であったりします。この「問い」の設定にはいつも気を配っていますね。

有福氏:例えば認知症のケアに関する話し合いを関係する家族と行った場合、いかに認知症の人を家の中に居させるか、いかに地域に迷惑をかけないかといった議論になりがちですが、少し視点を変えて、「誰もが主人公になれるまちづくりを実現するためには?」とすると、認知症の人もまちづくりの主人公に含まれ、どうやったら外に出かけられるかといった前向きな議論ができるようになります。また、セッションに参画する関係主体も多くなります。

森 氏:沖縄でフューチャーセッションを開催する場合には来ていただけますか。

有福氏:もちろんです。全国どこへでも行きます。

上井氏:琉球大学の学生は非常に質の高い活動をやっていますし、沖縄は個人的にも非常に関心の高い地域ですね。

有福氏:ぜひ沖縄で開催しましょう。

森 氏:今後ともよろしくお願い申し上げます。今日はどうもありがとうございました。

■株式会社フューチャーセッションズの概要
設立年:2012年
代表取締役社長:野村 恭彦
社員数:5名
主な事業:フューチャーセッションの企画・運営
クライアントの問いに対し、企業、行政、NPO、社会起業家等を縦横無尽につなげたフューチャーセッションの実施を通して、未来思考の協働型の行動促進を支援。また、全国を対象に、フューチャーセッション・プログラムを提供し、各地域、各組織の中で、フューチャーセッションを日常的に行なえるように支援していくとともに、フューチャーセッションのファシリテーションができる「イノベーション・ファシリテーター」の研修、育成も行う。
HP:http://www.futuresessions.com/